刀語 第一話「絶刀・鉋」

西尾維新講談社BOX[ニA-03]。2006年大河ノベルの第一話。980圓。講談社BOXのページにてPDF形式で第一章を讀むことが可能。

刀を持たない劍士だといふからてっきり、主人公が輕妙な戲言で十二人を次々と斃してゆく話なのかと思ってゐたが、なんのことはない、普通に實力で對決する話だった。この邊りは先月の時點でお試しを讀んで判ってゐたけど。本當のところ、これよりも『パーフェクトワールド』か『DDD』を買っておくべきだと思ってゐる。

なんといふか、『電撃!イージス5』を讀んだときのやうな感じがした。つまり、讀者としては『戯言シリーズ』に魅入られて西尾維新を讀み始めたわけで、その作風とは違ふものを突付けられると妙な違和感を感じてしまふ。西尾維新の場合は基本として一人稱語り部で會話がメインのものが多かったので、事前にダ・ヴィンチなどで『挑戦作』だと宣言されてゐてもその違和感は拭へない。竹のイラストは、最初はなんだか違和感があったが、讀んでゐるうちに、まあ良いやうな氣になってきた。

地の文が三人稱なのは、讀んだ限りでは『人間シリーズ』くらゐだったと思ふ*1。しかも刀語では過剩にメタフィクショナルになってゐる。地の文、人物の臺詞を問はず、顯らかに昭和以降の現代語や、明治に譯文體から生まれたはずの言ひまはしがあるのは御愛嬌。しかし、幼少から父と姉以外に話す人のゐなかった主人公が、いきなり本土から來た女と會話が通じるのか、などと思った。

本篇のあとには對戰相手紹介があって、一通りのプロフィルのほかに必殺技一覽(コマンド附き)が掲載されてゐた。正直、これがなかったら次以降も買ふか微妙なところだった。あと、刀狩で大佛が立てられた鞘走山清涼院護剣寺の『清涼院参り』で吹いた。

銀箱に貼られてゐるシールが邪魔。太田の手書きで「とにかくイイよ!」とか「やっぱ天才だわ!」「これすごい!」とか、説明になってゐない。正直不快。せっかく書家に題字を頼んでおいて、その名前を隱すやうに意味不明なシールを貼るのは失禮でないのか。

*1:『なこと写本』は讀んでないから分らない。『ニンギョウ』は忘れた。