鼻濁音(2)といふか北海道辯(1)

鼻濁音は鼻から拔ける音だと言はれるが、いまいち感覺として理解出來てゐなかった。上記によれば、鼻をつまんで發音すると鼻濁音かさうでない濁音かが判るらしい。なるほど、東京辯鼻濁音の法則とは微妙に異なるものの、慥かに無意識で發音しわけてゐる。



おそらく家のなかで一番言語的に擦れてゐない9歳の弟にいくつかの例を示して發音させてみた。もっとも自分の耳では未だに鼻濁音を判定できないので、上記の鼻つまみ式を採った。弟も自覺こそしてゐないが、明確に發音しわけてゐる。自分の發音との差異はまだ把握してゐないけれど、これもまた東京辯の法則とは異ってゐるやうだ。

自分の住んでゐる場所は札幌と旭川の間に位置し、地理的には旭川に近い。舊産炭地の城下町として機能してゐた街で、それなりに榮えてゐた。新十津川町のやうにひとつの地域から集團移殖してきた街ではない。さうだとしても炭鑛には各地から人が集まってゐるので、固有の方言的特徴は霧消したのではないかと思はれる。人口は微減少してゐるものの、交通的な優位があり、炭鑛が消えた今でもさして寂れた街ではない。

父方の祖父は、曾祖父の代から樺太開拓をしてゐた。その前は不明(訊いてゐない)。終戰後、シベリアを經て北海道へ。祖母は長野の生まれ、戰前に臺灣へ渡った。同じく終戰後に北海道。父は札幌生まれの札幌育ち。母方の曾祖父母はもと新潟で、道北の某町を開拓した。祖父母は開拓民同士の子で、母も同じく。

父方祖父母は札幌に居住してゐたせいか、北海道(札幌圈)辯的な言ひまはしがあるほかは標準語に近い。しかし母方の祖父母及び伯父は顯かになまりのあることばを話す。それが新潟のなまりなのかは知らない*1が、標準語ではない。語彙の面では北海道辯と標準語とが混淆してゐる。從弟はなまりは薄い感じはするが、やはりなまってゐる。母はもとなまってゐたのであらうが、札幌で就職したためか、日常的になまりはない。實家に歸ってきても別段言葉遣ひを變へるわけではない*2

まとめ擬き

鼻濁音の件から逸れてしまった。要するに。

  1. 札幌圈では標準語に近いことばが話される。
  2. 發音としては鼻濁音を使ってゐるが、餘り意識されない。
  3. 札幌圈の鼻濁音は東京辯の法則とは合はないものもある。
  4. KOTOKOは鼻濁音を使ってゐないらしい(眞僞は不明)。

*1:どうも、違ふ可能性もある。

*2:日常で標準語を話してゐても郷里の人間と話す際は方言に切替へて話す、いはゆるバイリンガルに近い状態の人が多いといふ。逆に切替へないのは興味深い現象だと思ふ。石狩市に居住してゐた同郷の親戚もなまってゐなかったやうに記憶してゐる。